接頭辞in-
2010-01-17
本日は接頭辞in-について考えます。単語と一体化して理解していることが多いため、普段はあまり意識しないかもしれません。しかし、実際の翻訳ではこのあたりも意識する必要があります。特に、in+[完全/全体/100 %を表す表現] の場合、「完全否定」と「部分否定」どちらの意味で使用されているか判断する必要があります。なぜか、このあたりは辞書や参考書でも明確に説明していません。以下に inappropriate の例を挙げましょう。
・(…に) 適切でない、不適当な;妥当でない、似つかわしくない (ランダムハウス)
・〔…に/…するのに〕不適当な、ふさわしくない、時宜に合わない (ジーニアス)
・不適当な、不穏当な (リーダーズ)
・不適切な、不適正な、不適当な、ふさわしくない、不穏当な、適切さを欠いた (ビジネス技術実用英語大辞典)
ここで問題となるのは日本語の接頭辞である「不」です。これは、結びつく語によって 100 % 否定のニュアンスが強くなります。上記の「不適切」は「適切とはいえない」よりも意味が強く、文脈によっては「適切」と対極の意味になります。
そのあたりをしっかり考えて訳語を当てているのは、ビジネス技術実用英語大辞典です。「適切さを欠いた」はこのニュアンスがしっかり出ていますね。